ノーファインダー!を私なりに訳すと「距離勘」となる・・・そう、この言葉はこの街で生まれた。
ブログを初めて間もない昨年の6月半ばにゴールデン街のことを書いた。
新宿あたりで飲むことが好きな人なら一度や二度は行ったことがあるゴールデン街。
35年前くらいだろうか、この界隈を徘徊し始めたのは! 徘徊?この街の存在はもっと前から知っていた。実際に店に入ったのは30年くらい前になると思う。
「変な街だな」という珍しさが勝ってライカ片手に徘徊した。
街といっても飲屋街だ。
70年代の新宿・・・ピース、自由、ディスコ、ハマトラ
ゴールデン街のすぐ近くには花園神社、70年後半の花園は唐十郎率いる赤テント、また「アングラ」という言葉が流行った、サイケデリック、ボヘミアン、イブサンローラン、山下洋輔トリオ、新宿ピットイン、300円の三本立て映画、キャバレー、艶やかな街、危ない街、新宿・・・。
当時の夜のゴールデン街といえば今とは逆で、通りは薄暗く、目を凝らさないと歩けないくらい本当に暗かった。と云うか、普通の人が飲みに行くような場所ではなかった。
そんな通りに、これまた目を凝らさないと見えないくらいの・・・!いろんな方達がいました、色んなことを教わりました。酒の注ぎ方、飲み方、年上の方との付き合い方・・・。全てゴールデン街ではあるが・・・。
でも足蹴に通えばこんな小僧でもおとな扱いしてくれる、暖かい街でした。
昼間も夜もにシャッターを切れば「あんた、ここを何処だと思ってんの・・・撮影は禁止よ」なんて、まるで、ひと月分のファンデーションと口紅を一度に塗ったような派手ハデおばちゃんに叱られてみたり(叱られたことより、おばちゃんの化粧に驚いた、化粧が立体なのだ、そう、3Dなのだ)・・・ま!色々と見たり、聞いたり、経験したりといろんなことを学び教わりました。
いつもLeicaを下げていた、カメラのファインダーに顔を近づけるだけで色々言われる街だからファインダーを覗くのも嫌になった時期もある。ならばファインダーなど覗かずに撮ればいいのだ!
その頃からだ、「ノーファインダーは?!ムムム」
そう!ファインダーを覗かずに距離勘だけでシャッターを押す癖を付けた。勘である、と云うか、例えばあらかじめ距離を2メーターにしておいて、自分が被写体との距離を詰めるのだ。
あとは指先でチョチョイと調整するのだ、盗撮ではない、ノーファインダーなのだ!この頃にノーファインダーなる言葉を言っておけば、今はレンジファインダーと二分したであろう?
なんてね。
最近、時間があるとこの街に行く、つい先日、この街で三十年近く酒場を営んでいた友人が亡くなった、私はこの店の客であり友人だった。
でも今ではファインダーを覗いて堂々とシャッターを切る!
「あんた、ここを何処だと思ってんの・・・撮影禁止よ」
誰にも文句は言わせない、そのくらいの気迫でシャッターを押す。
今、この街に足を運ぶ理由がある、格好つけて云うなら、自分の思い出を切り取っているんだ!